NextHill LAB / Habit Study 01
顔のマッサージで靭帯が伸びる?
靭帯の研究とマッサージの研究を、読み分けてみる
この記事の要点
- 顔の支持靭帯の研究は、献体から取り出した靭帯の力学的性質を調べたもので、日常のマッサージの影響を調べた試験ではありません。
- 今回確認した範囲では、一般的な顔のマッサージが靭帯を永久に伸ばすことを直接示すデータは見つかりませんでした。
- 一方、硬い器具で強く繰り返す刺激による筋肉の損傷は症例として報告されており、「力をかけるほど良い」という発想は見直す理由があります。
「顔をマッサージすると、肌を支える靭帯が伸びてしまう」
「一度伸びたら、もう戻らない」
美容のために続けてきた方ほど、こんな説明に驚くと思います。NextHill LABでは、顔の靭帯を調べた研究と、マッサージそのものを調べた研究を読み分けました。
「靭帯に力が加わる」と「日常のケアで損傷する」の間
顔の支持靭帯は、顔の組織をつなぎ、支える結合組織です。2012年の研究では、5体の献体から得た10側の顔で、靭帯の硬さ、伸び方、損傷に至る力などを調べています。部位によって性質に違いがありました。[1]
ただし、この実験は、露出させた靭帯の力学的性質を調べたものです。生きた人が皮膚の上からマッサージしたとき、靭帯にどれだけの力が届き、長期間に何が起きるかを調べた試験とは条件が違います。
今回確認した研究からは、一般的な顔のマッサージが支持靭帯を永久に伸ばし、たるみの最大の原因になる、という主張を裏づける直接的なデータは確認できませんでした。
「一度伸びたら修復不可能」という説明についても、マッサージによる損傷を追跡したデータと、その後の回復を調べたデータが必要です。解剖学の説明だけで、個人の肌の将来まで決めることはできません。
マッサージ研究は何を測っている?
実際には、次のような研究があります。
| 研究 | 対象・期間 | 観察されたこと | 読み取れる範囲 |
|---|---|---|---|
| ローラーと血流 (2018年)[2] | 短期実験12人、5週間の実験14人 | 施術側の皮膚血流増加、温熱刺激への血管反応の変化 | 血流の研究。靭帯の修復や、長期のたるみ予防は測定していない |
| セルフマッサージとCT (2022年)[3] | 29〜37歳の5人、1日2回・2週間 | 頬やSMASの位置・形状に変化を報告 | 少人数の前後比較。持続性や年齢の異なる人への効果は未確定 |
| ローラーとカッサの比較 (2025年)[4] | 女性34人を割り付け、33人が完了。8週間 | 両群で輪郭の計測値が変化し、ローラー群で皮膚弾力指標の改善を報告 | 無施術群がなく、靭帯や長期の安全性を直接評価していない |
研究を読むときに大切なのは、「血流が増えた」「表面の弾力が変わった」「靭帯が修復された」を、それぞれ別の結果として扱うことです。輪郭の数値の変化についても、組織が恒久的に持ち上がったと判断するには、その後の観察が必要です。
強い刺激による損傷は、症例として報告されている
2024年には、硬い木製器具で1日2回、1年間マッサージしていた63歳女性の報告がありました。顔の左右差としこりのような変化があり、手術で広頚筋の断裂が確認され、著者らは強い反復マッサージとの関連を報告しています。[5]
これは1人の症例で、損傷したのは筋肉です。一般的な洗顔や軽い手のケアによる靭帯損傷の頻度を示すものではありません。一方で、「力をかけるほど美容に良い」という発想を見直す理由にはなります。
私たちが選びたい、肌への接し方
痛みを我慢して押す、硬い器具で強くこする、あざができるほど繰り返す。そのような刺激を、美容効果の目安にするのは避けたいところです。
手で触れる場合も、肌を大きく引っ張る動作や、赤み・ヒリつきが残る力加減は見直す。こうした提案は、皮膚への刺激を減らすための実用的な方針です。靭帯を守れる圧力や回数として、科学的に確定した数値ではありません。[5]・[6]
これまでマッサージしていたという事実だけで、今のたるみの原因を決めることもできません。新しい左右差、しこり、痛みなどがある場合は、習慣だけで説明せず診察で確かめると安心です。
REFERENCES
- Brandt MG, et al. Biomechanical properties of the facial retaining ligaments. Arch Facial Plast Surg. 2012;14:289–294.
PubMed - Miyaji A, et al. Short- and long-term effects of using a facial massage roller on facial skin blood flow and vascular reactivity. Complement Ther Med. 2018;41:271–276.
PubMed - Okuda I, et al. Objective analysis of the effectiveness of facial massage using breakthrough computed tomographic technology: A preliminary pilot study. Skin Res Technol. 2022;28:472–479.
PubMed 全文(PMC) - Ahn S, et al. Comparative Effects of Facial Roller and Gua Sha Massage on Facial Contour, Muscle Tone, and Skin Elasticity: Randomized Controlled Trial. J Cosmet Dermatol. 2025;24:e70236.
PubMed 全文(PMC) - Jung KH, et al. Unilateral Platysma Muscle Rupture as an Effect of Using a Hard Wooden Block for Facial Massage. Arch Plast Surg. 2024;51:27–29.
PubMed 全文(PMC) - American Academy of Dermatology. Face washing 101.
公式資料